8月1週の木曜日から4泊5日で南アルプス南端の百名山、聖岳ひじりだけ3013mと光岳てかりだけ2591mに登山旅行会社のツアーで行ってきました。
仲間との山歩きを始めて24年ですが、静岡駅からバスで3時間入らないと登山口に辿りつけないこの山陵は例会で行くことなど思いもつかない限られた登山家のルートで私はには無縁の山…のはずでした。
ところが、還暦までに百名山…などと思い立ってしまったおかげで山小屋4泊というとんでもない夏休みを過ごすことになってしまいまったのです。
初日は通勤客で込み合う東京駅前からバスに乗車。百名山ブームのせいか参加者はなんと20人という大盛況でした。とはいっても同じ登山拠点からスタートする2コース合同で、我がグループは参加者9人と添乗2人、かたや山仲間と数年前に歩いた荒川三山コースが参加者11人と添乗1人でした。構成をみても我々のコースの厳しさが分かりますよね。
東名高速を静岡で降りて延々2時間、さらに送迎バスで1時間、大井川を遡って本日の宿泊椹島ロッジに到着しました。
数年前に荒川三山に行ったときも利用した快適な南アルプスの拠点は大井川源流にも近い聖地なんですね。
ここで湯ったり体を温めて、いよいよ2日目は聖岳を目指して登山開始です。
早朝5時45分出発の荒川三山組を見送って6時半にロッジからマイクロバスで登山口へ、6時45分に歩き始めました。写真の主は今回の同行者ですが八ヶ岳の小屋の常連で250キロマラソンにも出たという恐ろしい健脚じいさんです(失礼!)
まずは快晴の中ですぐに急登を進み樹林の中を2時間余りの聖沢吊橋で休憩。腹ごしらえをしてからさらに急登が続いてさすが南アルプスの3000m峰に向かっていることを実感。
昼頃には滝見台で谷を挟んだ大きな山肌にほんの少し雪渓が残り、見事な何段もの滝が2本聖沢に流れ落ちている光景が見られました。
リーダーがゆっくり歩いてくれたおかげでさほど苦しさも感じず標高差1100mを6時間余りで、聖平小屋2260mに到着しました。
谷間にあって展望は効かないものの爽やかな空気と樹林に囲まれた別天地、テラスでさっそくビール、焼酎、ワインの懇親会が始まりました。もちろん翌日に備えて?明るいうちにお開き。夕食もシュラフの寝床に入ったのも明るいうちでした。夜中に見た満天の星は感動ものでした。
3日目は小屋で朝食のあと5時半に出発。この日も快晴、日焼けと水分補給に気を使う贅沢な悩みです。
まずは聖岳3013mを往復。
小屋から稜線をひと登りで目を見張るような広々とした木道の草地を歩き、縦走路との合流を右に登るにつれて数えきれない多彩なお花畑が続いて急登のつらさも忘れさせてくれました。
登山道からはどっしりした聖岳が姿を現しました。さらに樹林の中を進んで山頂も目の前に見える所が小聖岳。
ここからは砂ザレと岩稜の歩きづらい急斜面をジグザグによじ登って3時間で待望の聖岳山頂に立つことができました。
裾野を広げた富士山は目の前、明日の光岳はもちろん、南の盟主赤石岳や恵那山、中央アルプス、御嶽山、八ヶ岳まで一望。北アルプスは遠くに山並みが見られました。三角点のある奥聖岳まで20分で往復してから下山。着替えなどデポした小屋に戻って昼食のあと、草原の縦走路を左に折れて光岳の拠点、茶臼小屋を目指しました。
聖までの標高差の半分とはいっても日本二百名山に数えられる上河内岳2803mは山容も大きく稜線のお花畑も見事で登りごたえのあるいい山でした。
登り下りを繰り返して4時間余りの15時に茶臼小屋到着。
ここは60人収容の小じんまりした小屋ですが百名山ブームと夏休み時期ということで満員。1ブロックのスペースにちょうど11人の寝袋が並んで寝返り禁止!状態です。寝袋の隙間に膝を寄せて聖岳登頂を祝してカンパイ。小屋からは富士山がドッカリと見えますがテラススペースはありません。テント場は聖もここもカラフルに埋め尽されていました。
そして4日目は行程12時間の長丁場、ということでいなり弁当を持って夜明け前の4時、富士山の五合目の明かりが見える中を光岳目指して出発。パラッと来た空も星と三日月が戻って、まずは1時間の茶臼岳2604mに登ります。実はここが本日の最高地点なんですね。
ヘッドランプ歩きから稜線に出ると三日月を天上にした富士山方面が朝焼けに染まり始めて、茶臼岳山頂では素晴らしいご来光を迎えることができました。
さて、ここから先は岩場から稜線を辿り樹林に入ってひたすら光岳を目指す登り下りの連続。
標高はほとんど変わらないのにいじめとしか思えない?足腰トレーニングの難行苦行でした(ちょっと大げさかな?)。雲行きもだんだん怪しくなって、まあその分炎天は免れて歩きやすい日和だったことは助かりました。樹林の中のコブのような易老岳2354mから一旦下って木道の水場から300mほど登り返したところが光小屋。さらに100m弱15分ほどで南アルプス最南端の百名山光岳2591mに到着しました。
片道6時間の山頂は展望がなく、その足でさらに15分の山名由来の白く大きく断崖に突き出した光岩を往復。
団体で込み合った山頂で記念写真を撮ってすぐに下山しました。
連泊の茶臼小屋への帰路にはイザルケ岳2540mに寄って光岳と周囲の山並みを展望しました。
しかし、なんとか我慢していた空がとうとう泣き始めて、我々もやむなく雨具を身につけての最後の2時間となりました。リーダーの計画どおりドンピシャ12時間の行動は私にとって2週間前の雨の13時間トムラウシ山に次ぐロングコースでした。さすがに疲れました。
辿り着いた茶臼小屋は日曜日泊まりだというのにさらに超満員。60人収容なのになんと120人泊まるとかで通路まで寝袋が置かれていました。
16時に着いて濡れたものの片付けなどで時間がないというのに、やっぱりみんな膝を寄せて登頂記念カンパイは欠かしませんでした。この小屋は夕食に刺身を出すのが有名らしく、連泊した我々は2日ともマグロ?の刺身を食べました。デザートまですべて同じでしたが味は上々で私は全部平らげました。
百名山2座登頂の満足感に浸りながら暑苦しい寝袋でもんもんとした最終日の朝は、降り続く雨の中をまたもや4時に出発。足元に気をつけながらヘッドランプを頼りに1時間半。
やっと樹林にも明るさが届いて、沢の吊橋やハシゴ渡りを繰り返して最後の登りヤレヤレ峠から下った畑薙大吊橋180mを無事に渡り切ってちょうど9時。
南アルプス百名山ツアーもやっとゴールインです。
バスで畑薙ダムから白樺温泉で下車して、もちろん4日間の汗と脂をさっぱりと流して、食堂で全員揃って最後のカンパイ!無事全員完全踏破の祝杯を上げたのでした!
そして路線バスで2時間40分。さらに静岡駅から東名高速バスに乗り換えて2時間半の夜7時45分に定刻どおり東京駅に無事到着しました。
どうなることかと心配だった4泊5日の南アルプスツアーは天候とリーダー、同行者に恵まれて思い出に残るよい山旅となりました。