私の百名山紀行もいよいよカウントダウン!?
難敵の北海道シリーズ第一彈は、梅雨のないこの季節に日高の名峰、幌尻岳に行ってきました。
百名山の先輩たちの話で、沢を何回も渡る額平川コースは増水で中止になることがたびたびと聞いたので、さすがに10万円以上使って何回も来るのはつらいなあ…ということで、林道を20キロ歩いて、シュラフ自炊の無人避難小屋泊まりで、沢渡りが1回だけの新冠コースから山頂を目指すことにしました。
先輩から薦められたら札幌のツアー会社ノマドで、ちょうど2泊3日コースがあったので、羽田からの往復格安航空券も合わせて申し込みました。エアドゥーは初搭乗です。
前泊の札幌泊も格安ビジネスホテルしたおかげで、総費用はお土産代込みで、10万円でお釣りがきました。
木曜日の夕方に仕事を早退して羽田から札幌へ。
明日に備えて駅地下の味噌ラーメンと餃子に生ビールでおとなしく寝床に入りました。
東京の週末は雨模様だったようですが、札幌の金曜日は快晴。
朝7時の駅前には8人の参加者と2人のガイドの10人が揃って定刻にワゴン車が発車しました。
事前に様子はわかりませんでしたが、定員が8人だったようで、やはりそれなりの厳しい山なんだと気を引き締めました!?
リーダーの佐藤さんは元スピードスケートの選手でガイド歴10年以上のベテラン。サポートの小林くんは野球部出身、登山歴2週間の体力勝負派の好青年。安心ヒヤヒヤの名コンビぶりでした。
参加者は懐かしの福岡から同い年の男性とほか6人は地元2人東京4人の元気な中高年女性陣。やはり今やどこも女性パワー全盛ですね。
ワゴン車は苫小牧方面から日高線に入って、なんと海岸線を走るではないですか!、日高は道南でもう海沿いだったんですね!
そしてもちろん、日高といえばサラブレッドのふるさと。サラブレッド銀座の通りには数え切れない牧場が並んで、将来のダービー、桜花賞馬たちが!?見事な栗毛をなびかせてのどかに牧草をはんでいました。
日高山脈に向かって北上を続けて、北海道電力が管理する発電所のゲートに11:30に到着しました。
ここからは、新冠のダム湖まで立派な林道が続いているというのに、なんとダムのちょっと先の避難小屋まで延々19キロの林道歩きが続くのでした。
ゲートは2ヶ所でしっかりロックされていてザックも人間もわずかなすき間からやっと入るというところ。もちろん、事前に許可が必要なんですよ。
こんなことやってるから電力会社はダメなんだ?とか八つ当たりしながら、おしゃべり5時間歩きで標高300mだけ稼いで、夕方5時近くにやっと避難小屋にたどり着きました。
林道の途中からは雪を被った日高山脈の稜線も見られました。
この時期に、しかも不人気のこのポロシリ…別名ボロシリ山荘に泊まる登山者は皆無?…まさに、小屋の床には昨年夏の?虫たちの死骸が散乱していてギョッとする様子でした。
それでも沢に水汲みに行くガイドの指示で参加者が手分けして竹ぼうきで掃除。蜘蛛の巣も払ってなんとか荷物を広げることができました。
お次は薪割りとストーブの火おこし。薪割り名人の女性がどんどん運んでくる一方で不慣れな男2人でようやくストーブに点火。
6時にはガイドの手料理、野菜たっぷりトマトソースのスパゲティとワカメスープが完成。
バイトくんが担いできた缶ビールひと口カンパイで前途を祝しました。
でも、住めば都で2階建て貸切で煙突からけむりが立ち上る水辺の山小屋は背景に目指す幌尻岳の稜線も見えて、なかなかの別天地でした。庭先の穴だけトイレ小屋も利用者がいないのでまあ許容範囲といったところです。
食事が住めば女性陣は2階へ。片づけ準備のガイドを横目に、還暦男組は早々にシュラフの中に潜り込みました。
さて、いよいよ本番、
土曜日の朝は5時の出発。山頂まで往復7時間の行程でその日も小屋泊まりなので、昼ごろには戻って時間が余るなあ〜、などと勝手に思い込んでいたのが大間違いだとわかったのは下山後でした。
早朝4時にはガイド作また具だくさんのお雑煮で腹ごしらえ万全にして、定刻10分前の4時50分に明るく晴れた小屋前を出発。
大きな蕗をかき分けて登山道へ入っていきました。歩きやすい樹林の道からブナ林へ。
雪をたっぷりつけた稜線を仰ぎ見ながら進んでいくうちに、細い沢を2,3回横切って、新冠川沿いの崖(へつり)を慎重に通過してまもなく1時間ほどでこのルート唯一の渡渉地点に出会いました。
雪解け水を集めた川はなかなかの勢いですが深さはせいぜい膝くらい。まあジャブジャブ歩きの手もありますが6月のこの時期はまだ水温も低く、替えの靴もないのでガイドが渡してくれた10メートルほどの流木の上を2本ストックで支えながら順番に渡っていきます。みな川にはまることなく向こう岸にたどり着きましたが、最後の私はあと一歩のとこでちょっとバランスを崩してあわやボッチャンになりそうでした。ヤレヤレ。
その後はツツジやスミレを愛でつつ人の少ない鬱蒼の登山道をかきわけつつ高度を稼いでいって
1300m地点の川沿いには山桜も満開の花をつけていました。見晴し場からは昨日車から登山口を通過したイドンナップ山など日高の山々の白い頂が一望でき、目指す幌尻岳は南の斜面と稜線の一部が目の前に広がりますが、登山ルートの雪渓と山頂はまだ隠れたままです。
7時15分に1400mの中間点を通過してまもなく、最初の足慣らし雪渓を踏んでなんとなく雪山気分をエンジョイ…と思ったのはその時だけで、山の西側に回って8時半に到着した1650m地点からは、見るも恐ろしい?大雪渓が山頂近くまで続いていたのです。
偵察に出たガイドも、今年は4月に雪が多かったので例年より雪が多いと、なにやら覚悟を決めたような雰囲気で、一人50mほど先のハイ松の浮島?まで登山靴を雪に蹴りこみながらトラバースして先行。参加者にアイゼン装着を指示してなにやら作業してます。しばらくするとハイ松に固定した8ミリロープをもう1ヶ所の支点で固定して戻ってきました。
ガイドとサブが急斜面の下で万一に備える体勢を取って、参加者がゆっくりとアイゼンをきかせながら前方のハイ松まで移動していきました。
そしてそこからまた裏へ回ってびっくり。まさに延々と急斜面の雪渓が山頂近くまで続いていたのです。ここからは、ガイドが先行してハイ松をみつけてはロープを固定して順番に雪渓を進んでいくことの繰り返し。
緩やかな一部地点ではロープなしでジグザグに、また蹴り込んで直登の時は数少ない男性の私が先頭で足場を作っていく、さらに長いルートでは2本のロープを使いまわしてガイドが固定してサブが回収の繰り返し。おかげで参加者はロープという安心感に支えられて、なんと2時間半をかけて標高差250mの急斜面雪渓を登りきることができたのです。
1900m地点からはハイ松と岩場の登山道に戻って30分ほどでやっと稜線へ。そこからは10分ほどで岩に覆われた幌尻岳2052mの山頂に、出発から5時間半の10時20分にようやく立つことができたのです。
当然全員ガイドと感激のタッチ。三角点、山頂標識ともタッチして百名山を実感しました。
山頂からの展望も申し分なし。
大雪山やトムラウシまでは望めませんでしたが、遠く夕張岳も見えたようで、雪の日高山系はグルッと360度の大パノラマ。どの山も姿がかっこよく、アルピニストの気分を満喫できました。
ゆっくりと感激に浸ってから11時過ぎに山頂発。
そして当然ながら、急斜面の雪渓は登りより下りの方がはるかに厳しく危険なんですよね。とにかく足を滑らせたらそのまま数百メートル滑落…はいサヨナラの世界です。ガイドはまさに2本で100mのロープを駆使して、臨機応変に安全安心のルートを確保していきます。もちろん本人はアイゼンなし。まさにプロの技術の真髄をみせつけられました。ちなみに30代のこの道10年以上のガイド佐藤さんはスピードスケート選手出身ということで足腰の強靭さは折り紙付き。山頂では参加者とのツーショットにV字開脚を披露してくれました。
雪渓の登りはジグザグルートでしたが、下りはほとんど直進ルート。日差しが強くやわらかい雪にかかとを踏みつけながらロープを手に添えて慎重に進んでいきました。最後の直線コースはなんと2本のロープをつないで100mを一気に下って、また標高差250m、2時間半の雪渓歩きが全員無事クリアできたのでした。
登山道から、渡渉、へつりと慎重に歩を進めて小屋に降り立ったのは夕方4時20分。なんと7時間の予定が、11時間半をかけてのロング登山となったのでした。ガイドが早朝出発にこだわったのは、雪渓での停滞を予期していたのだとあらためて感服しました。
全員、バンザイ気分で喜びを交わして2日目の小屋泊まりとなりました。一番疲れたはずのガイドはさっそく手料理造り。もちろん薪割り、火起しは参加者の手分けです。この日の献立は、新米サブ初体験のごはん炊きも成功。春雨、豚肉、野菜たっぷり、さらに登山道で摘んできた行者にんにく入りの丼ごはんとニラ、玉子スープ。味付けも絶品で普段主食がトーフの私も丼をおかわりしてしまいました。
さらにデザートには札幌在住の女性参加者から苫小牧名物のロールケーキが提供されて、もう満腹の夕食でした。もちろん登頂祝いの乾杯ビールもひとくちづつご馳走になりました。
就寝前にはガイドとサブに誘われて、行者にんにくとハム炒めをつまみに隠し焼酎までご馳走になって、心地よい疲れでぐっすり安眠しました。
最終日はまたパスタ系のおいしい朝食をいただいてから6時に小屋を出発。またまた延々5時間近い林道歩きが続きました。この3日間、熊のフン、キツネ、鹿には何回か遭遇しましたが、ここでなんとはじめて人間と出会いました。避難小屋に向かう夫婦登山者ですが、はたしてあの雪渓を往復できるものか心配な気持ちで見送りました。
11時前にゲートにゴールイン。ここからはワゴン車で日高サラブレッド街道を通って、新冠温泉へ直行。
ホテルも隣接している立派な温泉施設でゆったりと汗をながして、広間に全員集合してのランチ反省会。私はラーメンサラダと枝豆にもちろん生ビールで、最高の3日間をかみしめて福岡の男性と乾杯したのでした。
千歳空港には、予定より1時間半も早く夕方4時半に到着。
格安航空券は変更不可ということで、みやげの買い物と、北の食堂街で海鮮盛りだくさんのチラシ寿司、刺身、カニ、天ぷらセットと生ビール、地酒千歳鶴でリッチな夕食を堪能してから、千歳空港をあとに羽田から空港直通バスで自宅に深夜0時過ぎに無事帰還したのでした。