夏山後半戦は山の会ホイッスルの例会として、Oさんとふたりで、福島、新潟、山形の県境に連なる名山、飯豊山と最高峰の大日岳を民宿1泊寝袋持参の山小屋2泊で歩いてきました。
メンバーにずいぶん声をかけたけど、結局アラカン男二人旅になりました。正直寝袋かついで山小屋は私ももうこれで卒業の気分ですが、でも苦労したぶん山は申し分なく素晴らしかったですよ。
木曜日の朝予約していたタクシー会社から電話があって、乗車予定の磐越西線が間引きで不通だとか。仕方なく2時間遅い新幹線に乗って、Oさんとは会津若松で合流。
山都駅からタクシーで山深い福島喜多方市の川入民宿に着いたのはもう18時でした。
さっそく家庭ブロに入って、夕食は山菜づくしの家庭の味。同好のご夫婦とも山の話がはずんで、山間の民宿の夜をなごやかに過ごしました。
金曜日は宿の車に送られて5:15には一般車が入れない沢筋の登山口(700m)を歩き始め。
天気はくもり空から日が差し始めて上々です。1時間半で分岐。一般ルートから1時間以上ショートカットした計算で大儲けでした。
水場でのどを潤して樹林を進み地蔵山の分岐から三国岳へ向かう手前の剣が峰が最初の難関。両側が切り立った岩場が続き、
クサリにハシゴも越えて最後は岩山を撒くようによじ登ってやっと三国岳の避難小屋にたどり着きました。
時間は30分足らずですがスリル満点。
小屋番さんに磐梯山、吾妻連峰、安達太良山と教えてもらいながら、登りはいいけど下りが怖いねと言ったら、おととし2人転落死したよ…と聞かされてゾッとしました。
進行方向には飯豊山からの稜線伝いに最高峰の大日岳が望めて気を取り直しました。
予定より1時間半も早い10:30に翌日宿泊の切合小屋で昼食タイム。ころからは樹林やガレ場やまた岩場もあって展望とお花畑を楽しみながら気持ちのいい登り道が続きます。
なんといってもむらさきのマツムシソウの大群落が圧巻。
ほかにもイイデリンドウや可憐な花々も咲き競っていました。
最後にピークを越えて飯豊山と稜線の雪渓を正面に見ながらゆるやかに一登りしたところで、13時には宿泊の飯豊本山小屋(2102m)に到着しました。
予定より2時間40分も早く、小屋番からも天気がいいから飯豊の山頂に行ってこいと言われましたが、まあ明日2回も通るからいいや、ということでシュラフ、マットなど荷物をおろして小屋前の高台でさっそくOさんとお疲れ?の乾杯に入りました。酒はきらいという小屋番はお前らは変り者だとあきれていましたが、我々から見れば小屋番もけっこう愉快な変り者でしたね。
3時間近く気持ちのいい陽気と展望を楽しみながら過ごして、ボンカレーレトルトの夕食を後着のご夫婦と食べ終わると、もう就寝タイムです。驚いたことに簡易ながら飯豊連峰はどこも水洗トイレということで水もそれなりに豊富で避難小屋ながら住み心地は上々でした。1階には我ら2人が貸切でゆったりとシュラフにくるまって翌日4時までたっぷり10時間睡眠を取りました。
土曜日の明け方は小雨模様。小屋番に天気のいい時に山頂に行かない天罰だと言われても意に介さず、中華丼レトルト朝食のあと軽めのザックで5時半に小屋を出る頃は雨も上がって、東の山形側は茜色に染まり高曇りの好展望の中を小屋前の飯豊神社鳥居に手を合わせてから飯豊連峰稜線歩きを始めました。
百名山の飯豊山(2105m)は小屋とほぼ同じ高さ。
広い道をいったん下って登り返すともう15分で憧れの山頂に立つことができました。
360度の展望は山形の平野も見え、雲海に浮かぶ山々はどこまでも連なってこの山塊のふところの深さが実感できました。
もちろん稜線の先には最高峰の大日岳がおいでおいでをしています。
山頂写真を撮って、岩ゴロゴロ道を下って雪渓沿いに縦走路の稜線を辿りました。大雪渓に一番旨い湧き水があると小屋番に聞きましたが残念ながら見つけられませんでした。
小屋出発は計画より30分遅れでしたが、縦走路分岐の御西小屋には5分遅れの7:05に到着。雲がかかったり晴れたりを繰り返す大日岳までのピストンで行きはけっこうな登りをあえいで8:20に2128mの最高峰に立ちました。
目立たない山頂標識(百名山じゃないせいで?)と記念写真、もうひとつのピークから飯豊山をバックに記念写真、おまけにOさんがスマートフォン動画で360度映像を撮ってからUターン。10:45に2回目の飯豊山頂でひと休みして別れを惜しみながら本山小屋に戻りました。
ここで昼食タイムと帰り支度。シュラフ、マットも収容して膨らんだザックを背負って、12時に下山を開始しました。
宿泊の切合小屋にはもう13:15に到着。
土曜日で唯一食事付きの小屋ということで込み合うことが分かっていたので、そのまま麓まで一気に下山という手もありましたが。とはいってもさらに6時間近くかかるので断念。もう1泊シュラフ生活を楽しむ?ことにしました。この小屋は目の前にとうとうと水が流れていて使いたい放題。さっそく上半身裸になって汗をぬぐい着替えも済ませて、さっぱり気分で…もちろんまた乾杯タイムに入りました。
缶ビールのあと、前日はOさん持参のバーボンウイスキー、そしてこの日は私が持参の芋焼酎のラインアップ。おつまみも北海道産枝豆、イカ味噌、ミニトマト、塩味のパプリカなどなかなかの豪華版(手前味噌ですが)で、今回で百名山達成という先輩グループたちと歓談したりしながら楽しいときを過ごし、夕食の手づくりカレー(レトルトでない)はご夫婦と自炊組のスペースにお邪魔しておいしくいただきました。
小屋は朝日(17人)と読売(9人)の団体も加わって込み合いましたが、それでも北アルプスなどに比べれば天国のようなゆったりスペースで最後の?シュラフナイトを過ごしました。
ところが夜間からけっこうな雨音が続いて明け方までやむ気配がありません。我々2人は朝食を弁当に替えて4時50分、ご夫婦に別れを告げて小屋を出発。2日間雨具を避けたOさんもさすがに上下フル装備で雨の中を下山しました。
幸い気温も上がらなかったのでさほどムシ暑さは感じなかったものの、やはり気持ちのいい山行ではありません。6:05、三国岳でひと休みと朝食で腹ごしらえをして最大の難所の剣が峰の岩場を下ります。ところが先を行くOさんの姿が見えなくなったところで、勘違いした私は黄色いロープに導かれて左の沢を下ってしまいました。さらにロープで10mほど急な沢を降りたところで間違いに気づいて稜線までよじ登り。行き止まりと見えた大岩の先に登山道が見えて、慎重に手足とお尻も使って滑らないように気をつけながらなんとか岩場を無事下り終え、樹林の道に入ったときはほっとしました。ちなみにこの間は歩くのに必死でカメラはポケットに入ったままでした。
ここから登り下りを繰り返しながら、7:30頃水場でやっとOさんと合流。初日にショートカットで上がってきた道を横目に、タクシーが待つ正規の登山口川入キャンプ場まで土が深くえぐれた歩きづらい道を黙々と下ってようやく9:30にゴールインできました。
それでも当初計画より1時間40分も早く、10時に呼んだタクシー到着まで雨具を洗い、靴の泥を流して荷物整理をしました。
タクシーで20分ほどの日帰り温泉施設「いいでの湯」でさっぱりと汗を流して露天風呂にゆったりと浸かって極楽気分を満喫してからまたタクシーに乗車。Oさん差入れの缶ビールでゴールの乾杯をして磐越西線始発の喜多方駅前で下車。
運転手さんお奨めのラーメン店で全国ブランドの喜多方ラーメンに舌鼓を打って、餃子ともちろん生ビール(お代わりも)で締めの祝杯を上げたのでした。
Oさんが3年前から楽しみにしていたという飯豊山ですが、シュラフ、自炊で敬遠していた私も百名山登りたさでやっと来ましたが、山の深さとたおやかでかつ厳しさを兼ね備えた飯豊連峰の魅力に感動しました。避難小屋泊まりもなかなか快適でしたが、でもやはり登山の後は温泉でゆったりが一番ですね。