久しぶりに遠出の鉄道旅で、大震災から1年直前の東北、岩手県の宮古へいってきました。
JRの大人の休日倶楽部で企画した「現地を見て聞いて知って宮古の復興を応援しよう」という長いタイトルのツアーで、記者、カメラマン同行のモニターツアーということで、往復新幹線、ホテル泊3食に現地巡り観光がすべてセットで24800円という格安料金でした。
初日の8日はいつもの通勤時間に家を出て大宮駅へ。
職場に背中を向けながら、添乗員の出迎えを受けて乗車した東北新幹線やまびこの指定車両にはもう30人以上の同行者が集っていました。
復興応援ツアーとはいっても、観光で被災地にお金を落とすのが主目的なので??、もうおっさんグループは朝からアルコール全開で宴会モードでした。
一人旅の私はおとなしく車窓を眺め、新聞と読書にいそしんで、駅弁ランチを食したところで盛岡駅に到着しました。
通路からは雪を戴いた岩手山の大きな山容が見られました。
街中は雪はほとんどなく、寒さも気にならない晴れ模様の中を、岩手県北バスで観光地巡りのスタート。若いガイドさんが車窓の風景を丁寧に説明してくれます。
盛岡市内は震災の名残はまったくなく、石割桜のある官庁街を抜けて最初の見学場所南部杜氏の老舗酒造・あさ開きの酒蔵を訪ねました。
職人技の手造りとオートメーションのそれぞれの酒造工程を見たあとはもちろん試飲会。生酒、ドブロクから大吟醸まで4杯ご馳走になってホロ酔い気分。もちろんお土産も買って少し復興支援しました??
次の見学は、これも盛岡市内の南部鉄器工房へ。
伝統工芸の鉄瓶の製造工程では真っ赤に溶けた鉄を流し、製品化の前工程ではうるしでコーティングして色付けやつや出しをしていました。もちろん買い物…鉄瓶は高いので小物で勘弁してもらいました。
ここからいよいよ北上山地を越えて巨大津波の被災地・宮古に向かいました。
雪化粧した山々をウネウネと上り下りしながら2時間近くかけて夕刻に宮古市街地入り。
所々に基礎だけが残る建物の残骸とテレビで見慣れた仮設住宅が見えてきました。
そして、海岸沿いの通りに出たとたん、一面はまさに廃墟としかいいようのない光景が広がっていました。道路や信号などは修復されガレキはほとんど片づけられていますが、一帯は陸側は建物の基礎だけが残る空き地や鉄柱もねじ曲がったままのガソリンスタンドの残骸。海側の港湾設備はまさにガレキの塊のまま放置されている状況も残っていました。
それでも、クレーンなど復旧工事の歩みはそこかしこで続いており、漁港としての宮古の機能も再開されているようでした。
車窓からだけの市内巡りのあとは宮古随一の景勝地・浄土ケ浜へ向かいました。防波堤なども流された海岸線から高台へ出て眺めた浄土ケ浜は、被災を感じさせない景観をみせてくれましたが、海に下りると景色は一変。レストハウスは津波に破壊され、遊歩道は寸断、手すりはなぎ倒されてまだ修復できていませんでした。
それでも、白い奇岩群は被災前の姿をとどめて、まさに浄土ケ浜の趣を感じさせてくれてひと安心。
レストハウスも再開への改修工事の槌音が響き始めたようです。
薄暗くなった夕方5時にホテルにチェックイン。浄土ケ浜を見下ろす高台にあるパークホテルは幸い津波災害は免れたようですが、仮設住宅建設までは避難場所として利用されていたようです。
和室にゆったり一人、あわび、毛ガニ、焼うに、ひらめ、たい、まぐろ、いちご煮、ひっつみ汁に茶碗蒸し、ビーフシチューまでの豪華ビュッフェと大吟醸の夕食満喫のあとは貸し切り露天風呂に浸ってまさに極楽気分を堪能して寝床につきました。
土曜日の朝は、茨城県震度5弱の速報メールに起こされましたが、宮古は降りしきる雪模様の朝を迎えました。これもまた東北の旅の風情でしょう。
朝8時にホテル発。
昨日歩いた浄土ケ浜を今日は海から遊覧船で眺める趣向です。
雪の降る冬の海は…やっぱりけっこう荒れていましたが手すりにつかまりながら海猫のエサやりを楽しんだり、
津波で破壊された防波堤やブロック、建物が洗いざらい消失した無残な海沿いの街の跡などを目に焼き付けカメラに収めながら、
それでも見事な自然の景観を見せてくれる海岸線の断崖、奇岩群に目を奪われながら40分の遊覧を楽しみました。
ビジターセンターで三陸海岸の美しさをあらためて振り返ってから浄土ケ浜に別れを告げ、被災地を巡ってから宮古の漁菜市場で買い物。
ここでは奮発して?5000円もはたいてしまいました…まだ足りなかったかな?
宮古駅からは懐かしい三陸鉄道に乗って開通している最北端の小本まで40分の北リアス線の旅。
復興支援のポスターが掲示された車中では、被災地大槌町で身内も亡くしたという鉄道の社員が、被災当日の生々しい体験を写真を見せながら語ってくれました。
線路沿いには津波の爪痕がそこかしこに見られてあらためて心が痛みました。
ここは2キロに渡るスーパー堤防が、海岸線を覆っていた松林とともに根こそぎ消滅した無残な地点です。
陸側には仮設住宅が建っていました。
北リアス線は小本の先で線路が流されて、列車の運行はここまでです。
ツアーは小本駅からはまたバスに乗り換えて、岩泉町の景勝地・龍泉洞へ。日本三大鍾乳洞のひとつで、私は10年ほど前に訪ねてブルーの水をたたえた地底湖に感動した記憶があります。
2度目で感動は薄れたものの、昨年LEDでライトアップされた鍾乳洞はやはり見事な景観ではありました。
石筍も震災に負けず健在だったことにも安堵。さらに降りしきる雪景色が最高の趣を味わわせてくれました。ついでに龍泉洞会館の鶏肉野菜スープ雑炊風のランチもおいしかったです。もちろん土産も買いましたよ。
いよいよ今回の復興応援モニターツアーもこれで行程終了。
2時間のバスで盛岡駅に着いて解散。
私は、駅ビルで盛岡名物冷麺を食べて大満足で帰路についたのでした。
8ページのモニターアンケートにもまじめに答えたし、前夜はライターのインタビューにも応えたので、わざわざ休暇を取って参加した今回の旅も意義があったかなと自己満足しています。